この店にあった、黄精利用の健康食品のカタログに描かれていた植物のイラストを日本に持ち帰り見た結果、これは日本でも自生するミヤマナルコユリであり、中国から持ち帰った黄精の乾燥物は、茎が太いことからアマドコロまたはオオナルコユリであろうと考えられました。
また、日本での黄精の認知度はどうなのかと調べましたが、主に強壮剤、精力剤として高価な薬に配合されている程度で、民間では山アスパラと呼ばれ、春に若芽を食べる程度の用途にしか利用されていないことが分かりました。
私はこの年の4月に早速山に入り、自宅付近のナルコユリ類植物の自生状況を調査し、幾つかの個体を採取致しました。初めに採取したものは茎の全長が20cm、地下茎の長さが8cm、太さが10mm程度のミヤマナルコユリで、地下茎を乾燥させたところ黄精独特の甘みを持ち、その薬効(空腹感がなくなり強壮効果があった)を自分自身で確認できました。しかし、採取した地下茎も乾燥させると太さ(直径)が6mm程度に収縮してしまい、中国で買って来た乾燥黄精の20〜30mmという太さに比べると極めて細く、これでは相当大量に採取しないと個人的に利用することも難しいと感じました。
その後、6月に新潟県南部のある場所を訪れたところ、川辺に茎長1.0m近くになるオオナルコユリが自生しているのを発見しました。オオナルコユリが新潟県南部でも発見されたことは驚きでした。これに続いて自宅付近を探したところ、計5株のオオナルコユリを発見し、そのうちの1株を採取して畑に移植しました。
秋には、この個体から果実を採取し、翌年の発芽に向けた実験を始めましたが、農学について無知な私には発芽方法についての情報収集ができず、翌年春の発芽率は5%に達しませんでした。 日本国内でのオオナルコユリの繁殖方法については、当時私が調べた限りでは、昭和初期から多くの大学や農業研究機関で研究がなされているようですが、その内容のほとんどは非公開とされており、出版物があっても極めて高価で、我々一般人が入手できるシロモノではないことが分かりました。 |