( 2016年の登山記録 )       2015年の記録はこちら
 高妻山 (2,353m)  日本百名山
   乙妻山 (2,318m)  虚空の秘峰

戸隠牧場、弥勒新道登山口~六弥勒~高妻山山頂~乙妻山~高妻山山頂~六弥勒~戸隠牧場、弥勒新道登山口

(高妻山)登り高低差 1103m 登り所要時間 4.2h 登り獲得速度 263m/h
途中、六弥勒から九勢至までの勾配が緩いため除外すると、
戸隠牧場から六弥勒までは登り高低差 748m 登り所要時間 2.2h 登り獲得速度 340m/h
九勢至から高妻山頂までは登り高低差 319m 登り所要時間 1.0h 登り獲得速度 319m/h

 平成28年9月10日。8月下旬から日本各地に水害を発生させた台風の連続襲来の後、9月初頭には秋雨前線まで出現し、山行に適した天候が望めない日が続いていました。その頃に、今年金峰山と八ヶ岳の登山に誘ってくれたベテラン登山者から乙妻山登山の誘いがあり、9月10日、11日(土・日)のいずれかに決行しようという計画を立てました。すると、全く幸運にも、台風から変化した低気圧に高気圧が後続し、秋雨前線が一日だけ分断されるという、昨年9月5日の乙妻山単独登頂に似た待望の天気概況の変化が予想されました。

前日、9月9日午後発表時点の予想天気図

 同伴したベテラン登山者は、高妻山への登山は初めてなので、登頂経験のある私がガイドを務めることになりました。私としてもこの好天の到来をチャンスと捉え、前年に雲の発生で乙妻山から周囲の山々が眺望できなかった悔しさを晴らすべく、午前8時の乙妻山登頂を目標にして2:55に戸隠牧場駐車場を出発しました。

 2:55では、辺りは完全な闇であり、LEDライトを点けても登山道案内の標識が良く視認できませんでしたが、私が前年の登山で駐車場から弥勒尾根登山道までの経路を熟知していたので、それ程迷うことなく登山道入口に辿り着きました。
 9月のこの時期では深夜、早朝であっても気温は低くなく、コートや防寒着も必要ありませんでした。
 今回の山行での私の心配は、最近2ヶ月はまともな登山をしていないことと、夏バテで体力の低下を感じていたことでした。その為、弥勒尾根新道の終点の六弥勒までの748mの標高差獲得においては無理をせず、2人揃ってマイペースを貫きました。この結果、前年に私が単独で2.0時間で到達した六弥勒には2.2時間掛かって着きました。

 六弥勒の到着時間が5:20頃で、薄暗い中に高妻山の山頂や、北アルプスの連山もハッキリ見えました。予想通りの快晴です。

 六弥勒で約15分の朝食休憩後、順調に七薬師、八観音を通過し、約30分で九勢至に到着です。


 NHKで放映された「日本百名山」の高妻山編で、藪を出た瞬間に高妻山の山頂が真正面で現れるシーンがある。この撮影箇所は、正にそのポイント。深夜に掛かっていたガスも晴れ、黒姫山の方向から登った朝日に照射された山頂には、どこにも曇りがない。これから登る稜線の登山道の位置も確認できた。

 時間はまだ6:10。我々のコンディションも絶好調で、一気に登り切ってしまおうということで合意した。


 また今回も画像を掲載しますが、登山者の体力を奪う激登の画像です。あと僅かで稜線に出るという箇所です。しかし、天候もモチベーションも最高なので、私達は何も苦労することなくこの場をクリアーし、山頂までまっしぐらに進んだことは覚えています。

 我々がこの日の最初の登頂者だったということは後から分かったが、この岩場の急登は登山者が混雑する、嫌な箇所だ。小石1個を誤って落としても、加速して下にいる登山者に当たる危険があるので、特に注意を払いたい所だ。

 そして、時刻7:05、見事に登頂を果たしました。

 夏バテ気味で、最近は山行から遠ざかっているのは2人とも同じでしたが、予想よりも短時間で疲労無く登頂できたことと、空気が乾燥していて全方向の山の姿がとても良く見えたという想定通りの時間設定が「見事」だったのです。
 私達が2ヶ月前に登頂した八ヶ岳(赤岳)と富士山も、雲海の上に見えました。
 後から来る登山者も無く、25分間山頂を独占し、充分な休憩を取りました。


 この日の日中の天気予報が降水確率0%の晴天で、土曜日だったということから、相当多くの登山者が来ると予想していたが、我々が10:30頃、帰りに立ち寄った時の山頂での滞在者は12人程度しかいなかった、それも周囲が厚いガスに包まれ、近くの戸隠山でさえも見えなくなっていた。


 秋らしい筋雲も、美しい。

 前年の9月5日に私が登頂した時は、この時点で8:00で、北アルプスはまだ見えましたが、雨飾山方面は見えなくなっていました。今回はほぼ最高のコンディションで目に焼き付けることができました。行動時間を1時間早めたことで、前年のリベンジを果たした訳です。




 今回の山行は、同伴するベテラン登山者の経験が豊富であることから、乙妻山を到達点と始めから決めていますので、迷わず乙妻山へGO!!です。


( 2016年の登山記録 )       2015年の記録はこちら

  虚空の秘峰   乙妻山 (2,318m) 

 急峻な岩登りの果てに辿り着くことのできる高妻山。更にその先、修験者の行場として最終点となる虚空蔵菩薩の祠を配した乙妻山がある。
 その頂は、極僅かしか訪れることのない登山者を待ち続けるかのように、静寂に包まれた空間の中にある。
 ここは戸隠霊場の最終到達点。十三仏との結縁(けちえん)が完成される、究極のパワースポットだ。



※ 乙妻山登山道のルート解説や危険箇所の詳細は、私の前年のサイトを御覧下さい。



 ”いつかまた登ります”と宣言していましたが、まさか翌年にこの山に再チャレンジするとは、自分でも思っていませんでした。
 今回は、前年に初登頂した時の経験を活かし、より安全で快適な行動ができるかどうかの腕試しとなりました。

セクション1: 高妻山~十一阿閦(あしゅく)

  高妻山山頂から約5分の所に待ち受ける、最大の難所であるキレット通過ですが、周囲の雑草や木枝が刈り払われており、登山道が乾燥していれば足を滑らせる心配も無く通過できると思います。
 今回は、このキレットの状況を十一阿閦から高妻山に向けて(帰りに)撮影した画像を掲載します。

 ここを通過すれば、乙妻山の山頂までは安全な登山道が続きます。


 天候状態によっては濃いガスが掛かって足下が見えにくくなることもあるので、この場所だけはバランスを崩したり、躓くことの無い様に注意しなければならない。


セクション2: 十一阿閦(あしゅく)~十二大日

 今回も感動したのは、ダケカンバとシャクナゲの大群落です。紅葉時期には、ナナカマドも真っ赤に色づくことでしょう。紅葉鑑賞に高妻山を訪れる方は、是非足を伸ばして乙妻山の秋の景色も楽しんで下さい。




セクション3: 十二大日~十三虚空蔵

 中妻山を過ぎ、高妻山を振り返ると、この様な力強い尾根が見られます。雲海の先は群馬、秩父、山梨方面です。先月登った志賀高原の横手山も、山頂の大きな電波塔が目印になり、方向が確認できました。




 戸隠牧場から5.4時間、時刻は8:20。途中高妻山で長い休憩を取っていたので5時間は切れませんでしたが、最終到達点の乙妻山山頂、十三虚空蔵に到着しました。

 想定した通り、まだ周囲の山に雲は掛かっていません。遠方の平地は雲海の下で見えませんでしたが、北アルプス・立山方面、南アルプス、八ヶ岳、秩父方面、頸城三山、雨飾山、そして日本海の海面と、完全なる360度の眺望ができました。(富士山は、高妻山に隠れて見えません。)

 風の音だけが僅かに聞こえるとても静かな山頂で、次にどの山に登りたいか、実物を指差して品評、談義するということを私達は1時間余りも続けていました。やがて雨飾山と白馬岳方面が雲に隠れ始め、充分な腹ごしらえができたことから、9:30に下山を開始しました。




 下山を開始して約20分後に、今日初めてほかの乙妻山登山者(単独)と出会いました。出発時間を訊くと、一不動避難小屋に宿泊しており、5:40に出発したとのことでした
(つまり、明るくなってから出発したのですね。)。当日の天候を見てから行動を開始でき、まだこの様な早い時間帯に登頂できるのですから、これも良い作戦だと思います。
 私達が高妻山に戻るまでに、後から6名のチャレンジャーが乙妻山に向かっていきましたが、既に10:00を回っており、近くの山はガスで見えなくなり始めていました。帰りの高妻山からの眺望はとても悪く、北アルプスが一部でも見えれば幸運と言えるほどの状況になっていました。これは前年に私が経験して分かったことですが、高層の雲は天気図や降雨予測動画の通りで、無いに等しいのです。しかし、数日間降水が続いて湿度が上昇し、夜中に気温が低下したことにより地表面に結露が発生し、これが夏場の晴天時、朝になって気温が上昇すると一斉に蒸発するためガスに覆われるのです。これを避けて山頂から遠方を眺望するには、この地方(妙高、戸隠、北信)では朝8時までに登頂しなければならないのです。よって、私が昨年乙妻山登頂に掛かった時間を逆算すれば、登山開始時間=3:00という行動計画は、必然的に求められるという訳です。

 今回の乙妻山登山は、私にとっては良いことばかりではありませんでした。下山時、高妻山山頂付近で右足膝が痛み始め、苦しみながら3時間半歩き続けました。膝痛は私の持病の様なもので、2年前に四阿山で痛めた左膝がその後のトレーニングで再発しなくなったのは良かったですが、今回は初めて右膝を痛めました。夏バテと運動不足に原因があったのでしょうが、今後もセルフケアに努めたいと思います。

 私の記事が、より多くの高妻山、乙妻山登山者の方の参考になり、安全な登山につながることを望んでいます。



雪国黄精の オカダ・システムエンジニアリング研究所
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