白馬岳(大蓮華岳)   (2,932m)  日本百名山

    小蓮華山        (2,766m)  新潟県最高標高地点

この記録は、ヤマレコでも公開(文章量は少なく、画像が主体)していますので、併せて御覧下さい。

蓮華温泉~白馬大池~小蓮華山~三国境~白馬岳~大雪渓~猿倉  日帰り

  (蓮華温泉~小蓮華山)    登り高低差 1,291m 登り所要時間 3.5h 登り獲得速度 369m/h
  (蓮華温泉~白馬岳全行程) 登り高低差 1,457m 登り所要時間 5.0h 登り獲得速度 291m/h 歩行距離 約16km

 例年待ち望む、秋雨前線消滅後の連休を目掛けた山行です。今年の夏は晴天に恵まれた日が少な く、いつかチャンスがあれば金銭的リスクを度外視してでも行きたい山に行こうと計画しており、 その第一候補が白馬岳でした。9月9日には、ようやく期待された天候が予報されたことで実行に移しました。今回は、山小屋 (白馬山荘)初デビューとなることから、到着後にくつろいで飲む500ccの缶ビールや防寒着、着替えなどの携行品も多くなり、ザックの総重量は6.5kmとなりました。これで、通常どんな山でも2Lの水を携行していますが、今回は1Lに抑えました。
 交通ルートは、連休で多数の登山客が見込まれることから車による移動は諦め、直江津駅からの公共交通機関の利用となりました。

(行きの交通経路)
直江津  5:18
 ↓ (トキ鉄)
糸魚川  5:59
糸魚川  6:17
 ↓  (糸魚川バス 乗務員の接客態度が悪い。今後利用することに対しては消極的な考えになった。)
蓮華温泉 7:52

 蓮華温泉からの登山開始は8:00。駐車場は予想通り既に満車。宿泊可能な施設が1軒あるだけの小さな温泉でした。残雪のある雪倉岳がすぐ近くに見える快晴の中、始めからハイペースで登りました。
 今回の白馬岳までの時間配分は、標準コースタイムでは6.5時間(登頂予定時刻は14:30)ですが、過去のネット上での記録では、最も早い人で4.5時間という例があり、これは私の個人的な考えですが、行動時間が長いほど重い荷物を背負って立っている時間も長くなり体力を消耗するので、いつも行動は短時間に納めることにしているため、出発の3日前、机上で5.0時間という少し無理をした登り時間を設定しました。このため白馬大池までは2.5時間、小蓮華山までは3.5時間というチェックポイントを設けて時間管理を行いました。

 朝方は適度な気温でしたが、40分程度歩くと汗ばんできたので、長袖のシャツは脱いでTシャツ1枚になり、ズボンは膝上までまくり、体温をできるだけ下げて心拍数の上限を上げました。蓮華温泉までのバスの乗客(10人位?)で、白馬岳に向かう登山者の中では私が完全に先頭に立ちました。その後、3分間の休憩を一度取り、白馬大池に到着しました。

 白馬大池 ここまでの所要時間 2.2時間 (目標時間2.5時間)

 樹林帯を抜け、栂池ロープウエイから来ることのできる白馬大池が見えました。涼風が吹き抜けます。これから登る小蓮華山の頂上付近までが澄んで見えます。合流する登山者も増えてきました。
 小蓮華山までは縦走路になり、膝を曲げなくても進める登山道が続きますが、勾配は急で、少しペースを上げると脈拍が上限に達してキツくなりますので高度を上げることができません。雪倉岳方面は相変わらず晴れていますが、ここから見えるはずの妙高山・日本海側は雲に包まれて見えません。これからの天候が心配になってきました。



  小蓮華山 ここまでの所要時間 3.5時間 (目標時間3.5時間)

 ここが新潟県の最高標高点になります。2年前の秋に雨飾山に登頂した後、その後の登山対象地を佐渡と県内西部に移すという目標は、これで一通り達成されたことを喜びながら山頂で10分間の朝食休憩を取りました。
 歩行ペースは、ここで目標通りの3.5時間となりました。あと1.5時間で白馬岳に登頂できれば目標クリアーです。ネットに掲載された最速値では、ここから白馬岳まで1.0時間でしたので、私もチャレンジしてみたいと思い、気合いを入れて出発しました。
 途中、女性が登山道にじっと立っていたので寄ってみると、近くに雷鳥がいると言っていました。私も近くに立つと、なんとハイマツの茂みから未成熟な3羽の雷鳥が現れ、人間が2m近くまで接近しているのに逃げることもなく、チョコチョコと岩場を迷走しているではありませんか。私も雷鳥を観たのは初めてで、集まった数人の登山客と共に、静かに数分間楽しく観察しました。
 朝日岳方面の分岐となる三国境に到着したのは小蓮華山から45分後で、白馬岳まで1.0時間という超目標は達成できなくなりました。既に足が重く感じて速度が低下していたからです。ここで無理をすると筋肉に負担を掛け、下山時に影響することを知っていますから、あとはマイペースを維持しました。
 白馬岳の山頂は近くに迫ってきているのを感じるのですが、東側からは冷たいガスが湧き上がり、今日期待している日本海や妙高戸隠連山を望むことは、未だに叶っていません。下界の山は何一つ見えないのです。

 白馬岳 ここまでの所要時間 5.0時間 (目標時間5.0時間)

 時計を気にし始めたのは15分前で、たまに覆われるガスでどこが山頂なのか分からなくなり、是非とも目標タイムだけはクリアーしたいとの考えだけで、ラストスパートを始めていました。すると山頂と思われる地点に展望指示盤の様なものが霞んで見えたので、近づいてみたらこれが山頂でした。山頂からは全方位ガスのため眺望不能で、登山者は10人もいませんでした。

 13:00なので、猿倉から登ってくる集団も到着していないのでしょう。ここで、このまま猿倉へ下りて日帰りとするか、山荘に泊まるかの選択を行い、私の「登山の師匠」に電話で登頂を報告したところ、「この登りコースで5時間とは大したものだ。本当なのか!宿泊代の節約になるから、猿倉へ下りる体力があるなら下りれば良い。4時間あれば充分だろう。猿倉からバスが無ければここから迎えに行ってもいいぞ!」と、日帰りを勧めてくれました。私もこの時点で、日帰りができるチャンスが目前にあるのならば掴み取った方がいい。白馬山荘の宿泊登山ならば、また後からでもできるのだから。という考えが優勢だったので、昼食を食べて13:10に下山を開始しました。


 この日泊まる予定だった白馬山荘と、その下にある白馬岳頂上宿舎も下見してきました。この時点で喉が渇いており、携行した缶ビールをここで水替わりに飲んでも良いのですが、この後の危険箇所で災害に遭うのは怖いので何かソフトドリンクを自販機で買おうと思いました。缶ビール各種700円は理解できなくないですが、500ccPETボトルのドリンクやミネラルウォーターが450円という価格を見て、「ふざけんな!!」と思いました。ここでは飲料は買わず、家から携行した水の最後の残り、約150ccを飲み干して順調に歩を進め、大雪渓へ向かいました。
 ちょうど時間帯でしょうか、登山者が蟻の群れのように押し寄せてきます。この日の猿倉からの登山者は何時頃出発したのかは分かりませんが、早く着いて白馬山荘で祝杯を上げている登山者もいれば、大雪渓の終点でバテており、ここからの行程がどれほど苦しいか知っているのか、開き直ったかの様に大休憩を取っている最後列の人もいて、色々な人の行動のウォッチングをするのも楽しかったです。
 白馬山荘から大雪渓までは、相当な高低差があると感じました。かなり下りた所にある避難小屋辺りからようやく大雪渓を見ることができましたが、下りても下りても、なかなか雪渓に辿り着きません。白馬山荘を出発して雪渓を踏んだのは、1時間40分後でした。もうこの時間帯では、登り登山者は時間規制で一人も登ってきませんでした。私より前には、遙か先の雪渓に3人の下山者がおり、私の後には誰もいませんでした。
 ←画像は雪渓の途中に転がっていた巨石で、私の身長よりも高いのですが、こんなのが直撃してきたらどう対処すれば良いというのでしょうか。登山の経験者の中には「危険は自らの心の中にある」という人もいますが、落石はアウト・オブ・コントロールではないでしょうか。登山は日常を離れた危険と隣り合わせの行動であるということを認識する必要がありますね。

 今回の山行では大雪渓を通過することが分かっていたので、私の「登山の師匠」に9月でアイゼンは必要かということを一月前に質問していました。その回答は「雪国に住んでいる俺達ならば、こんな雪渓如きで、もし滑っても怪我することは無い。トレッキングポールを持っているのならば登りも下りもアイゼンは不要だ。」という簡潔なものでした。それで私は始めからアイゼンは用意していませんでした。
 初めて見る大雪渓にアイゼン無しで足を踏み入れたところ、数歩歩いて片足が滑りました。これで私はすぐに、登山靴を履いたまま滑降ができると思いました。私は小学校以来スキーを学校の必須授業で苦労して習い、そのトラウマでスキーそのものが大嫌いなので高校卒業後一度もスキーを履いていませんが、昔取った杵柄というものでしょうか。両手に掴んだトレッキングポールでバランスを取りながら直立姿勢のまま滑降し、前にいた登山者を追い越して大雪渓を15分と掛からずに通過したのです。途中3回は転倒しましたが、雪上での受け身を熟知しているのでダメージはありませんでした。これで雪渓を無事に通過し、通常の登山道に入って分かったのですが、私の膝に大きな変化が生じたのです。私はそれまで、右の膝に支障があり、一日4時間位の登山行で下山に入った時、いたわりながら歩かないと膝が強く痛んでいたのです。これは今回の登山でも最も心配しており、大雪渓に入った時点で発症の前兆がありました。それが、痛みが消えて早く歩けるようになったのです。
 大雪渓では転倒する登山者も多いのでしょうか。途中にモンベルの寝袋が落ちていました。安全な場所に落ちていたので、後で誰かが拾ったことでしょう。

 白馬尻小屋までの僅かな距離は順調に進み、小屋で水を補給しました。白馬尻小屋での休憩者は7人程おり、全て下山者でした。
 その後、緩い登山道を下りて猿倉に16:50に無事到着し、この時点で路線バスは運行されていないのでタクシーを呼んで白馬駅に到着しました。白馬駅では、次の電車の待ち時間が50分あったため、ここで缶ビールを開けて祝杯にしました。

(帰りの交通経路)
白 馬  18:28
 ↓ (JR東。大糸線の駅舎も車輌も美しくリニューアルされて、以前の古臭い大糸線のイメージはどこにもなくなったので驚いた。乗車率も高い。)
南小谷  18:46
南小谷  19:03
 ↓ (JR西。この路線も車輌が一新された。今度は日中に車窓の景色を楽しみながら乗車してみたい。)
糸魚川  19:59
糸魚川  21:08
 ↓ (トキ鉄・日本海ひすいライン。以前飛騨高山からの帰りに夜間に乗車している。)
直江津  21:49

自宅の出発から到着までを24時間で完結させる、完全なる日帰り登山行を達成した。

 この日日帰り登山にしたことで、翌日は軽い家事を済ませることができ、充分に休養を取ることもできました。

 思えば、この山は平成25年以前から、新潟県の上越地方に住んでいるならば是非とも登ってみたい名山だと認識していました。しかし1日で登り標高差1,400m以上、山中泊が不可避という常識に洗脳され、時間的・金銭的なハードルの高い山という特別な見方をしていました。しかし、この日13:00に登り時間5時間での登頂を果たしたとき、自分には絶対に解放不可能だと思い込んでいた呪縛が解けて、新しい自分に生まれ変わったという確信ができたのです。山行を終え、この文章を執筆している今でも、これが本当に現実に発生している事象なのかと信じられないでいるのですが、自分の身体的にも何か変化が生じているという気がしています。
 またいつか必ず白馬岳に登らなければならないと考えています。


雪国黄精の オカダ・システムエンジニアリング研究所
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